Pages

金曜日, 10月 06, 2006

ウィンドサーフィンと旅

抜けるようなスカイブルーの空と、澄んだコバルトブルーの海。
白い浜辺に、鮮やかな色のセールとボードが置いてある。
寄せては返す波が潮騒を奏で、くだけた波のしぶきが風になって潮の香りを運ぶ。
白い砂浜には、風紋の柔らかな陰影が刻み込まれる。
振り返ると緑の木々が風にざわめき、鳥や動物達の声が聞こえる。
太陽はじりじりと照りつけて、汗ばんだ僕の体の真っ黒な影を、白い砂浜に暴力的にたたきつける。

海の人に、風の力を利用することを覚えないかと誘われる。
その導きに従い、左手にボード右手にセールを持って海へ向かう。
ひんやりとした水の感触を、膝に感じた所でボードに足をかけ、セールに風をいれて沖へ出る。

水のしぶきが爽快だ。
潮の香りがやさしい。
海面が陽光をきらきらと映し出す。
セーリングするその足元で、澄んだアクアブルーの海の底がゆらゆらと浮び上る。
カラフルな熱帯魚のアクセントが美しい。

アートだ。カンクンというカリブ海に面した町に住んでいた頃の記憶。



あれから10年経たろうか?

砂浜についた足跡が風にうずもれていくように、記憶も失われていった。
そんなある日、運命の糸に手繰りよせられるように、横浜の砂浜で再びセールとボードを手にする。
強い風だった。
セールを引き込むと、ボードが海水面から浮いて猛烈な勢いで走り出した。
プレーニングだ!
強烈なスピード感!
微妙なバランスを維持するため体のばねと筋力を巧みに使う。
緊張と集中は極限状態に達する。

海からあがり、浜辺のウィンドサーファー達と声を交わす。
個人的なスポーツなのに、皆仲間を求めている。
自然と接する喜びを共に楽しみながら、他方で自然の持つ危険を克服しようと試みているのだ。
見知らぬ人でも「今日の風は・・・」という会話からはじまり素朴な疑問や正直な自分を語り合う。
老若男女様々な人がいる。
退職後始めた方もいる。
ここでは地位、年齢は関係ない。
自然と接することを楽しめる心と体の健康に関心を持てるなら、そして維持していきたいと思うなら、その気持ちがコミュニティをつくる力だ。



秋のある日、その海辺(横浜市金沢区海の公園)でバーベキューを楽しんだ。
爽やかな秋晴れの美しい1日だった。
ウィンドサーフィンで賑わう海。
青い海の上を鮮やかな色のセールが自在に駆け抜けて白い航跡が残る。
秋晴れの空には、大きな鳥がゆっくりとした時間を飛行している。
その影が落ちる砂浜の縁には、緑の芝が広がり木々の緑が大きく揺れている。

潮の香り、バーベキューのオリーブオイルの香り。
冷たいビールがおいしい。
会話もはずむ。
子供達は潮干狩りで採ったあさりを焼いている。
皆、新しく出会う自然の世界に夢中だ。


ウィンドサーフィンを始めて、海をカンバスにしたアートとコミュニケーションの豊かさを知った。
心の居場所を失いがちな現代社会、自然の恵みに心から感謝したい。
秋の日のバーベキューが、参加者の心に美しい記憶として残ってくれれば幸いである。