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日曜日, 10月 05, 2008

腰痛の最新事情

腰痛と一言で言うが、その原因は様々だ。

テレビで腰痛について特集を報じていたので記録しておこう。

「二足歩行を始めた人類は、華奢な腰で上半身を支えるために、腰痛という災禍を負って生きていかなければならなくなった」という一つの定説があるが、テレビの内容はそれに対する挑戦とも受け取れる内容だった。

人類はチンパンジーと祖先を一にする。チンパンジーは4足歩行を原則として木々を腕でぶらさがりながらつたって生きる生活を選んだのに対して、人類は二足歩行で地面上での生活を選んだ。その後の進化の過程で、その二つの選択には、骨格上の発達の差異が生じる。特に腰の部分の背骨(腰椎)と骨盤に注目。チンパンジーは腰の背骨が骨盤に守られるように発達するが、これは、腕でぶら下がる生活で下半身が振られがちな状態を守るためだと解説があった。一方人間は、二足歩行での前後のバランスをとるために、背骨の動きをより自由にするよう腰が進化した。だが、これは、逆に人間の上部と下部とたった一本の背骨で支えるという構造が自由な動きとの代償として華奢になったことを意味する。

ここで二つの現実が提起される。

1.長距離の狩猟をする民族。ここでは腰痛が起こっていないという。
2.長距離マラソンランナーの椎間板には劣化がない。これは、一定の運動により椎間板を伸縮させることにより椎間板自体の新陳代謝が促進されたと考えられる。

これらの現実から、二足歩行が即腰痛の直接的な原因とは言えないということだ。
そして、またさらにいくつかの現実が伝えられる。

腰の動きは、一つ一つの背骨の間にある椎間板という弾力体のおかげで実現されている。この椎間板は弾性体であり、なおかつひとつひとつの背骨を接着する働きがある。加齢によりこの弾性体は劣化する。その結果、背骨がずれたり、背骨の間からはみ出したり(椎間板ヘルニア)する。背骨にそって神経も走っているから、それらの障害がおこると神経を圧迫して激しい痛みが発生する。加齢による椎間板の劣化以外に、繰り返される一定の激しい運動によってもおこる可能性がある。先のマラソンランナーの場合、運動による一定の椎間板の伸縮が、椎間板自体の新陳代謝を促し、加齢による劣化を抑えていたと報告されいる。

一方で、激しい運動によって逆に悪い影響を及ぼすケースもあるということだ。その代表的な運動が、前傾姿勢だ。そして、これは、農耕民族の農耕作業やその収穫を食用に加工する作業に頻繁に現れる。腰痛のルーツをたどると、二足歩行に原因を求めるよりは、農耕民族のこれらの作業に原因を求める方がより現実に近いのかもしれない。


医学界でも腰痛に対して真剣な取り組みが行われたのは実はここ10年だという。最近さまざまなことが分かってきている。それでも、現在の医学で診断の付く腰痛は15%。非特異的腰痛と呼ばれるよくわからない腰痛が85%。ちなみに、ぎっくり腰のほとんどは原因がわからない。


医学界の努力として、ある実験が紹介された。直立姿勢(72kgの男性)で椎間板にかかる荷重は66kgだが、前かがみの姿勢では235kgの負荷がかかる。4倍近くだ。
これほど多くの力がかかる理由は、背筋の支持力による。前傾姿勢を支える背筋に加わる力が、椎間板に反力としてかかるためこのような大きな力が加わる。

別の事例では、疲労骨折の例が挙げられた。激しい動作の繰り返しが腰痛を生む場合、背骨の一部が疲労骨折が起こしているケースがある。腰椎分離症。特に成長期の若い方に多いらしい。発症後の対策としてはコルセットで腰を固定すること。数か月で分離した腰椎がくっつくケースが多いというが、発見が早かった場合で治療が適切だった場合だ。


もうひとつ、注目されるケースがある。心理的ストレスが腰に及ぼす影響をケース。アメリカで報告された実験の内容だが、腰に負荷のかかる作業をストレスを与えて行った場合、腰への負荷が70kg増えていた。これは、作業のさせ方について、非常に重要な示唆を与えていると思う。


番組ではさらに、椎間板や骨に異常がないのに、ストレスが腰痛に影響を及ぼすことがあるケースを取り上げていた。
最近の医療では、心因性も考慮されているという。

心療内科の医師の診断により、入院によりストレスがかかっている仕事からしばらく離れてみたという事例を紹介していた。1年間入院し、回復したらしい。ちなみに、沈みがち、不安でじっとしていられない人は心理的に安定している人に比べて30倍腰痛が多いという事実があるという。

これらの心理面での腰痛の分析を進めるため、脳に与える影響の差異を調べたという。腰に直接刺激を与えた場合に脳が働く部分と慢性腰痛が発したときの脳が動く部分は異なる。背骨に直接影響を与えた場合、視床が刺激され、脳の様々な部分が刺激されるのに対し、慢性腰痛の患者は腰から来た小さな刺激のあと、前頭葉が感じている。痛みの記憶が増幅され、長く持続されるようになっていると考えられる。


最近の医療の現場では、心療内科の医師も整形外科医との連携で治療に当たっているという。



庶民レベルでの、腰痛対策は、

1.姿勢を正す。前傾姿勢は要注意。
2.適切な運動を行う。(腹筋・背筋を鍛え、椎間板の新陳代謝を促す)
3.栄養(グルコサミンコンドロイチンコラーゲンカルシウム)の摂取
4.ストレスとの付き合い方。
5.痛みが生じたら、とりあえず医者に行って、レントゲン、MRIで物理的原因を見極めることだろう。
6.物理的に障害が生じていたら、安静第一。コルセットによる固定、投薬による治癒、手術による原因の除去などの手段があるが、信頼おける病院に行くのが良い。

ということだろうか?

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